先週火曜日、川崎市登戸で痛ましい事件がありました。通学バスを待っていた小学生の列に刃物を持った男が斬りかかり、19名もの小学生と父兄が死傷しました。お亡くなりになられた小学生、ならびに父兄や関係者の方に衷心よりお悔やみ申し上げます。
今回の犯人ですが、長年仕事に就かず親族の家に引きこもっていた中年のようです。面倒を見ていた親族とも直接顔を合わせることなく、長年気ままな引きこもり生活を行ってきたようです。しかしその親族が高齢化により今後の見通しが立たないため、公的機関と相談を始めた矢先の凶行だったように思います。このような引きこもりの中年は全国に約60万人も存在するといわれていますから、こういった事件が再発する可能性はゼロではありません。今回の件でそういった引きこもり中年をどうするかの論議が起きるでしょうが、簡単には解決することは難しい問題のように思います。
引きこもりの原因は様々でしょうが、それを受け入れ生活させてきた親が一つの問題といえます。高度成長期を生きてきた世代の親は自宅を所有し十分な年金をもらっているため、老後を豊かに暮らせている方が多いように思います。その子息の世代が今回の犯人ですから、親のすねをかじって外界との接触を持たなくても十分な生活ができてきたようです。しかし親の高齢化とともに自らを面倒見てくれる存在や資金がなくなりますから、行き場がなくなってしまうことになります。若いときに努力をして社会と接点を持とうとせず、家の中で自らの好きなように過ごしてきた人間にとって、その保証がなくなることは恐怖以外の何物でも無いでしょう。その理由を自らではなく社会に求めると、今回のような事件が発せしてしまう可能性があります。結果として社会に復讐し自らの人生を終える、拡大自殺といわれる今回のような事件が起きてしまうようです。
さまざまな理由で生活が成り立たない人間に対し生活保護を提供するのは、国のセーフネットとというメカニズムといえます。したがって今後このような問題を防ぐために税金を使うのは、仕方が無いのかもしれません。しかし親の支援を受けず苦しい中でもまともに努力しなんとか生活してきた同世代の人間や若者にとって、まともな努力をせず親のすねをかじって50代まで引きこもった人間に対し、自らの血税を使われる事を納得することも難しいように思います。そういった人間が生活保護などのセーフネットの適用を受けるためには、親の財産をきちんと精算し残額を国庫に納付した後に生活保護などの施策の適用を受けることが必要に思われます。
今回の犯人は小学生を襲った直後、少し離れたバス停で自殺しました。まさに典型的な拡大自殺のようです。しかし今回の犯人の遺留品に遺書や動機を示す文章はなく、自宅からは大量殺人に関する書籍はあったものの、明確な動機は不明のようです。被害者の遺族や関係者にとってにとって動機の解明は非常に重要ですが、今回の件ではそれを明らかにすることが難しいように思います。私がなにより怖いと思ったことは、現代ではネットとの接点をもたないと、その人間の行動や精神状況などの記録が一切残らないということです。今回の犯人はPCもスマホも利用していないようでした。それらを利用していれば、ネット検索の履歴や通信の履歴から犯人がどのような思考によって行動を行い、何が引き金でこういった凶行を引き起こしたかが事後的に分析することが可能です。まさにデジタルタトゥーをもとに、犯人の行動履歴を洗って犯行の動機を推測することが可能なのです。
しかし今回の犯人のように、現代のネット社会に参加しない人間は、その行動が基本的に残りません。近隣の映像などで直近の行動はつかめても、引きこもりですから外出の記録は基本的に少ないでしょう。となると、やはりこういった犯行の動機をつかむことは難しく、再発の防止策も講じにくくなってしまうように思います。
日曜日にも家族を対象とした同様の事件が福岡で発生しましたが、今後このような事件を再発させないためには、犯行の動機と再発を防止する対策を講じなければなりません。しかし肝心な動機を追うことができず、その明確な理由も分からなければ、推測の域を超えない対策しかこうじられませんし、効果も期待できません。ネット時代の盲点を突いた今回の事件は、今後多くの人間が考えるべきテーマを確実に残してしまったように思えます。