未だに梅雨は明けないものの、急に蒸し暑い日々が続きます。涼しい日々に慣れた体には、本当に堪える季節となりました。
さて先日木曜日のこと、京都で大惨事がありました。アニメーション業界で有名な京都アニメーションの製作スタジオが放火され、本日までに才能あふれる若い方々を衷心に34名の方がお亡くなりになりました。お亡くなりになられた方、被害を受けた方、ご家族、並びに関係者の方々に衷心よりお悔やみ申し上げ、ご冥福をお祈りしたいと思います。
今回の事件は瞬時に世界で報道され、さまざまな国から支援の声が上がっています。アニメーションに関わる企業や個人はもとより、カナダの首相や台湾の総統からも弔意が述べられています。これほど多くの反応が世界中からあったのは、やはり作品の芸術性の高さ故と思われます。私自身それほど詳しいわけではありませんが、「涼宮ハルヒの憂鬱」や「けいおん!」は知っていますし、近年は「聲の形」という劇場用アニメを配信で見たこともあります。最近のアニメは非常に精密に登場人物や背景が表現されていますし、映画と遜色のない表現芸術だと思います。最近ハリウッドではやりのCGアニメとは一線を画す表現形態と思いますし、動く絵という媒体だからこその想像力の広がりなどを感じさせるもの、日本のアニメの特徴なのでしょう。
だからこそ今回の件で才能あふれる若い方々が亡くなったことは、本当に残念という言葉以外表現する言葉が見つかりません。アニメーションという分野で自らの才能を磨き、将来は宮崎駿監督や新海誠監督のように世界を代表する巨匠になる方も沢山いたかもしれないと思うと、いたたまれない気持ちになります。いまはただ生き残った方々の心身の回復を願いたいと思いますし、一日も早くアニメーションの世界へ復帰できることを心から祈っています。
日にちが経つにつれ、事件の経緯が徐々に明らかになってきました。当日たまたまセキュリティロックがされていなかった建物に侵入し、3階まで続くらせん階段のあるホールにガソリンをまいて火をつけたようです。気化したガソリンは瞬時に三階まで燃え上がり、避難するまもなく炎と一酸化炭素が建物に充満し多くの方がお亡くなりになったようです。お亡くなりになった方の大半は屋上へ逃げようとする階段で一酸化炭素中毒になってしまったようであり、本当に悲惨としかいえない事件になりました。
犯人について詳しいことは解っていないようですが、埼玉在住の男であり、現状では一方的な妄想で自作の小説が盗まれたと京都アニメーションを逆恨みしたようです。埼玉在住ですから京都までわざわざ赴いて犯行を行っていますから、計画的犯行であることは間違いないでしょう。犯人の男は強盗の前科もあり、犯人の居所付近の住民によると日頃から粗暴な反応が強かったようです。さらに埼玉県の臨時職員として3年ほど働いた後は、まともな正職にもついていないようです。今回の事件も、川崎の幼稚園児殺害の犯人同様、社会と途絶する中で一方的な恨みを温め、手頃な相手を対象に発散した事例にように思えます。
こういった環境を呪い他者に害をもたらす犯行を、通り魔といいます。しかし戦後の通り魔事件の中でも今回の件はきわめて異質であり、34名もの方がお亡くなりになっています。単独犯でこれほどの残虐性を示したのは数年前の障害者施設に対する襲撃以来ですが、今回はそれ以上に残虐性が高いように思われます。思想背景があればテロの世界であり、こういった個人の独善にもとづいた凶行がこれ以上起きない事を願いますが、これは願望でしかないのでしょう。逆にアベノミクスの創り出す前向きな社会に取り残されて、自分はチャンスのない才能ある弱者であるという思いをもつ人間は増えているように思います。結果として社会から途絶して引きこもり、自らの才能を賛美しそれを認めない他者を攻撃するという犯行は、今後も増えるような気がします。積極的な対策がないからこそ地道にこういった可能性のある人間をあきらかにし、国が何らかの施策を行わざるを得なくなったように私には思えます。
こういった状況を放置すると、来年のオリンピックで何らかの凶行が発生する事も予想されます。オリンピックは世界中の才能あふれる若者の祭典ですし、世界中から応援の人間が訪れます。テレビは連日その話題が中心になるでしょうし、世界中がそれに熱狂します。その中でそういった人間はますます孤立感を感じるでしょうし、逆に自分の存在を世界に示す大きな機会と考えてしまう可能性は否定できません。警備は厳しくてもガソリンの携行缶一つで大きな被害を生めますし、警備の厳しい試合会場ではない会場へのバスや宿舎への襲撃も充分考えられてしまいます。こういった犯罪が発生しないように警備を強めてくるでしょうが、それでも十分な対策を期間中全面的に行うのは非常に難しいと思います。今回の事件をきちんと分析し、警備の観点でもどのような対策が必要かを考え、同時にそういった可能性のある人間を近づけない方策を警備陣営は考えざるを得なくなりました。
今回の件は先日の幼稚園児襲撃の犯人同様、社会に対する不満を理不尽に他者に向けた犯罪です。こういった犯罪は残念ながら増加することが予想されるからこそ、何らかの実効性のある対策を皆が考える必要があると思います。