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Weekly report

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 July Fifth week

 7月最後のWeekly Reportです。いつ明けるか、と晴れの日を切望する日々がつづきますが、予定されていた梅雨明けは週末の台風で伸びてしまいました。今週には待望の梅雨明けとなってほしいですが、今年の異常気象ですのでこのまま秋に、という可能性も否定はできません。私のほうはこの二週間ずっと風邪が治らず、とうとう週末には発熱まで。天気になって体中のカビやらなんやらを追っ払いたいところです。

 さて先日英国の首相が交代になりました。新首相となったのはボリス・ジョンソン氏です。金髪の奇抜か髪型からどこかの大統領を訪仏させる要望ですが、その言動や行いもよく似た部分がある方のようです。もともとはジャーナリストの方のようですが、当時からその記事内容に虚偽や誇張が入ることで有名だったようです。2008年にはロンドン市長になり、8年ほどその任を務めたことになります。

 そのボリス氏が世界的に有名になったのは、イギリスのEU離脱を決める国民投票の際です。当時のキャメロン首相が自らの信任のために行ったEU離脱の国民投票ですが、本人の予想に反して離脱票が集まってしまい、結果として英国はEUの離脱という事態になりました。その際に国民を先導したのが今回のボリス・ジョンソン氏であり、イギリスは週に3億5千万ポンド(470億円)もの巨額な資金をEUに支払っており、離脱をすればその資金が社会保障に当てられると国民をあおり立てました。それを信じたイギリスの若者が中心となって離脱票を投票した結果、EUの離脱が決定的なものになりました。しかしその後の調査で3億5千万ポンドというのは虚偽の数字であり、それに騙された国民が離脱を決定してしまったようです。

 ともあれそのボリス氏が今回は首相になったことで、今後のEU離脱の行方が気になるようになりました。無条件離脱であるハードブレグジットを選択するのか、交渉を通して関税やさまざまな点についてよりよい条件を引き出して離脱するのか、期限を延長して離脱を保留して残留するのか、今後はどうなるかが解りません。このボリス氏は日和見の政治家と言われますので、その時の国民感情を上手にとらえて現実的な対応策を講じてくるのかもしれません。

 ボリス氏の不安な点は、その言動の怪しさです。根拠のないことをベースに論陣を張ったり、事実であってもその規模や範囲を超えた誇張を行うのがこの方の経歴ですので、国民を誤誘導するためにどのような論陣を張ってくるかが不安です。またもともとは英国帝国主義的な発言もある方ですから、どこかの大統領のように国際協調ではなく英国だけが有利になる施策を積極的に他国に押しつけてくる可能性もあります。

 とはいえ逆にボリス氏は、どこぞの大統領と違い高学歴で政治経験があることは期待できます。金の亡者で自国優先主義のどこかの大統領とは一線を画し政治が解っていますから、あまり極端で独善の主張をするのではなく、全体として納得のいく合理的な判断を下す可能性もあります。

 今回の首相交代が怖いのは、米国同様独善的な自国優先主義を打ち出してこないか、という点です。もともとEUは米国に対抗し、さまざまな資源を国境なく自由に行き来することで大きな経済圏を創り出そうとしたものです。それによって各国の人材バランスを適正にし、それぞれの国がそれぞれの違った得意分野を持って反映しようと考えたのがもともとのコンセプトです。しかし実際にEUを形成してみると、それぞれの国が自国に有利な施策を講じようとしますし、独自の得意分野を創る前に経済力の強い国だけが人を吸収したり、貧しい国から仕事が流出しますます貧しさが増したといった事態が起きてしまいました。各国は努力を重ねてこの問題を解決しようとしますが、今回の英国のように貧しい国に縛られて経済の発達を阻害されるよりも、やはり一つの国に戻って自国だけが有利になる施策を行っていこうとすることは理解しやすいと思います。

 しかし地球温暖が代表するように、国際協調無しに今後の世界を維持することは事実上不可能です。自国の繁栄は必ず他国の犠牲によって成り立っていますし、それを無視すれば結局はどの国の繁栄も難しくなることは自明の理です。米国の自国優先主義は経済や政治の面での混乱を世界中に起こしていますが、それに英国も続くとなると、世界中の多くの国がこれに倣ってしまう可能性が高まります。日本も水産資源の分野ではルールを無視する中国、韓国、台湾に大きな影響を受けています。こうった事態があらゆる分野で起きることは、世界の安定という観点からも世界の環境保全という観点からも望ましいことではありません。

 今回の首相交代は、打つ手のなくなったメイ首相の後をついだ茨のスタートであることは間違いありません。新首相であるボリス・ジョンソン氏がどのような船出をするか、そして世界をどのような方向に導いていくか、世界中が彼の動向を見守っています。