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Weekly report

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 January Third week

 早くも今年三回目のWeekly Reportです。

 さて1月6日に米国で行われたCES2020において、トヨタ自動車社長の豊田章男氏が、実証都市「コネクテッド・シティ」というコンセプトを発表しました。広さ70万u(東京ドーム15個分)の土地に自動運転、CASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)、MaaS(Mobility as a Service)、ロボット、スマートホームなどの実験都市を作るこの試みは、今後の街と自動車のあり方を検討するよい実験場になると思われます。この実験場には約二千名のトヨタ自動車関連の社員が済むことになり、実験環境での生活を送ります。トヨタはそこでさまざまなデータを取得し、今後のITをベースとしたスマートシティや自動自動車の展開の基礎とするようです。

 またこの実験都市であるウーブン・シティでは、ライフラインを地下に敷設し、人間らしく住みやすい街を目指すようです。建物は基本木造にして環境負荷の低い素材を活用するようですし、太陽光パネルを屋上に敷設してエネルギーも極力自前で賄うことを目指すようです。まさにトヨタの考えるサスティナブルな街であり今後の具体的な姿が期待されます。

 この取り組みが成功すれば、IoTを活用したスマートシティを現実化した街となりますし、今後の都市開発に一つのモデルを提供する事になるでしょう。人間にとって住みやすく、環境の負荷が低い街は世界で求められていますし、そこで補足されたデータやさまざまな問題を前向きに解決していけば、将来の街作りにおおきなヒントとなります。

 さらにこのモデルが素晴らしいと思うのは、地方再生の一つの具体的アイディアになる可能性があることです。私が住む静岡県東伊豆町は、78万㎢に一万二千人の住人が住んでいます。今回のウーブン・シティはその100分の1の広さで二千名を収容します。人口をベースに合わせると、ウーブン・シティは東伊豆町の人口を収容するために4.2㎢しか必要が広さが必要のないことになり、現在の東伊豆町の18分の1程の面積でいいことになります。私の隣の河津町は100万㎢で7200人、下田市で105万㎢で21400人、南伊豆町で110.6万㎢で8200人、西伊豆町で105.5万㎢で7800名ですから、どこも同じような人口密度です。おそらくこれは、日本の都市部以外の平均的状況であり、高齢化が進む地方都市では人口全般が減っていくはずです。

 これが意味することは、日本の地方都市のライフラインを維持することが難しくなる、ということです。住民が住んでいれば道路の整備が必要であり、水や電気を敷設する必要があります。通信のためにケーブルを引くか携帯の基地局を置くことになりますし、やはり電気が必要です。たった数軒で数名の人口のために多大なコストがかかるのが現在の日本の地方都市の状況であり、希薄な人口では税収もほとんどありません。となれば国からの補助金だけが頼みになりますが、国民全体の人口が減っていけばこれが不可能になります。つまり現在の姿で地方都市のライフラインを維持することは不可能と言わざるを得ないのです。

 ところが今回のウーブン・シティのような街を作ると、ライフラインは20分の1ぐらいになります。さらに集約度が上がった分保守等の効率も上がりますから、維持コストも下がるでしょう。住民が近隣に存在すれば相互の協力が見込めますし、公共施設や医療施設の稼働率も高められます。さらに地域特性にあった業種の誘致を行えば、それぞれの地方毎にさまざまな専門家が集まる新しい街を創り出すことも可能になり、都会の人口集中が改善できますし労働生産性が上がったり心身の健康状況がよくなり医療費そのものの削減に繋げられる可能性も上がります。

 私自身東伊豆町にいるときは、集中して知的活動を行うことができます。疲れれば自然の中を散歩できますし、屋外のレジャーも豊富です。ソフトウェア開発や事務処理的な業種であれば、間違いなく生産性は高まりますし従業員の健康状況も良くなるでしょう。通勤時間も短くなりますし、週末に人間らしい生活をすることも可能になります。ましてやスマートシティであれば、世界中ともネットワークで繋がっていますし、最新のサービスも受けることは可能でしょう。都会のリアル店舗の顧客もネットに奪われているのですから、数多くの店がなくても都会と同様の生活ができることは間違いありません。日本の地方都市が、米国のシリコンバレーのように生まれ変わっていけば、さまざまな分野でのイノベーションを生み出すことも不可能ではないように思います。

 今回の取り組みは、単にスマートシティの実験場というだけでなく、今後の地方都市の再生にもかかわる大きな実験のように思います。これが成功し、さまざまな企業がその特性に合った地方であたらなスマートシティを作り労働環境を含めた豊かな生活環境を作り出し、地方の衰退を根本的に変革させてくれることを心から願いたいと思っています。