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Weekly report

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 January Fourth week

 オーディオメーカーのBOSEは、米国、欧州、オーストラリア、日本にある119の直営店を、今後三年のうちに閉店することを決定しました。理由はネットビジネスへのシフトということですが、オーディオメーカーがこういった戦略にでることが必要になるとは、本当に時代を感じる出来事です。

 私自身古き良きオーディオマニアであり、30年ほど前からスピーカーはBOSEを中心に購入してきました。ライブハウスなどのプロ用機器で有名なBOSEは、私の好きなJAZZやFUSIONとの相性が良かったためこのスピーカーを選んできました。現在でも所有するスピーカーの中の30本ほどがBOSE社のものですから、結構なマニアだったのかもしれません。

 もともとはオーディオ用のスピーカーを展開してきましたが、ホームシアターの発展とともにホームシアター用の小型のラインナップも増え、部屋のサイズに合わせたいろいろな形・大きさのスピーカーを提供していました。しかし10年ほど前に大幅にラインナップを整理し、従来のオーディオ用のスピーカーはプロ用を除いて多くが廃盤になってしまいました。それに代わって登場してきたのがヘットフォンやPC用の小型スピーカーであり、ビジネスの中心がシフトしたことを感じさせられました。最近ではスマートデバイスなども発表しており、スピーカーよりもIT機器に近い製品が中心になってきたように思います。

 今年になっていよいよビジネスがシフトし、リアルの店舗がなくなるというのは時代を感じさせられます。スピーカーは音が勝負ですから、実際に音を確認する必要があるためどうしても点灯での確認がいります。ヨドバシカメラなどの量販店の売り場に並べても、最適な状態で音を鳴らすことはできませんし、ホームシアターなどは専用のスペースがないと確認が難しいところもあります。となると直営店で音を確認して、というのがビジネスの基本だったはずなのですが、いよいよこのビジネスを辞めるということなのでしょう。

 考えてみれば、オーディオマニアという言葉が死語になるぐらい、オーディオ製品は売れなくなっています。ミニコンポやラジカセを持っている若者や家庭も激減していると想像できます。もっているのはスマートフォンやシリコンオーディオプレヤーであり、耳に直接スピーカーを当てて聞くようなデバイスばかりであり、実際に空間で音楽を鳴らすことはないのでしょう。大きな音を鳴らせば近隣から騒音の苦情が出ますし、同居している家族からも文句が出る時代ですので、この流れは仕方ないのかもしれません。同時にAmazon Echoやグーグルスピーカーなどのスマートスピーカーのほうがさまざまな意味で便利であり、わざわざスピーカーを買って音を鳴らす必要性もなくなったしまったのが事実ように思います。

 それでもヘッドフォンを通した音と優れたスピーカーを通した音では、臨場感が違うというのが年寄りの実感です。空気の振動を楽しむのと、耳に直接音をぶつけるのでは余韻が違いますし、小さい音で鳴らしたときの雰囲気もことなるように思うのです。ライブハウスやコンサートホールで聞く生音は、ミュージシャンの精神を感じるほどの迫力があります。良いコンディションで録音した音を良質なスピーカーで鳴らすことは、原音とは違っても雰囲気を感じられる豊かさがあります。また大きくITが関与するホームシアターでも、映画館に近い臨場感を味わうことは可能ですし、音がその方向から流れる素晴らしさはやはり感動を呼び起こすよう思うのです。

 しかし時代は変わり、音を楽しむではなく音楽で暇をつぶす時代になってしまったのでしょうし、ミュージシャンの息づかいよりメロディが大事になってしまったのでしょう。そうやって時代は変わり、古いものは忘れられていくのかもしれません。

 レコードプレーヤーで鳴らすJAZZは、アナログそのものの生々しさがありました。ホコリの音が気になったりキズやすり減った独特の問題はありましたが、それでもワクワクさせる音がそこにはありました。CDは便利で簡単ですが、音の雰囲気という意味ではレコードには及びませんでした。そしてスピーカーがヘッドフォンやミニスピーカーに変わった今は、音ではなく記録を確認する時代になってしまったのかもしれません。となればスピーカーメーカーは生き残るために時代に合った製品を販売せざるを得ないでしょうし、音を楽しむ空間は、コストに押されて閉鎖せざるを得なくなるのでしょう。

 今日も朝から解散寸前のおじいさんバンドの原型となったアルバムを、スピーカーで鳴らしています。今から30年前の録音で当時のシンセサイザーなどの楽器も古くさいアレンジですが、それでも今日に続く素晴らしい音を届けてくれます。この豊かな音の素晴らしさを知らない世代が増えていくことは、本当に残念でなりません。