新型コロナウィルス
の猛威が止まりません。先週は千人台といわれていた中国国内の患者数も1万4千人を超えたようですし、死者も300名を超えました。世界では、死者は出ていないものの感染者が発見された国が16カ国に拡大と感染の勢いは止まりそうもありません。日本国内でも武漢からの観光客を運んだバスの運転手とガイドが罹患していることが判明しましたし、政府のチャーター機で帰国した数百名の中からも、10名ほどの感染者が発見されています。人から人への感染だけでなく、感染しても無症状の人から感染するケースも発見されており、事態は深刻のようです。
WHOは1月30日に緊急事態宣言を発動し、医療機関の脆弱な国への拡大を警告しています。日本のように厳重な治療体制や拡大防止策をとれる国はまだしも、十分な医療さえ行われていない国で感染が広がった場合、その拡大を止めることが難しいためです。中国の観光客が日本へ感染を運んできたことは解っていますから、中国国内の人間が世界中の国に渡航すれば確実に感染は広がります。中国はアフリカを重点投資先としているため、多くの中国人ビジネスマンがアフリカに訪れています。春節で帰国した中国人が現地に戻ればその国の国民が感染する可能性は極めて高く、その場合に世界への感染拡大が爆発的に広がる可能性もあります。
現状新型コロナウィルスの性質が良く解っていないため対応は難しいところですが、他の新型ウィルスに比べ致死率は低いようです。国立感染研究所は新型コロナウィルスの患者からの分離と培養に成功したようですから、今後ウィルスの特性や効果的な治療法が見つかる可能性は高まりました。しかしウィルスは変異する可能性もあるため、できるだけ早めの研究と治療法を見つける努力が必要となりますし、ワクチンの作成も成功させなければなりません。研究者は必死の努力を重ねると信じますが、ここでもスーパーコンピュータ等によって早期の分析が望まれるところです。
今回の新型コロナウィルスの問題は、国の対応が後手に回っていると言うことです。政府のチャーター機は飛ばしたものの一時隔離のための施設は十分でなく、一部の帰国者を二人部屋にしたため無用な感染を増やしてしまう可能性もありました。また全員を一定期間隔離することを義務づけることもできず、二名が感染している可能性があるにも関わらず帰宅するなどさらなる感染拡大の可能性を高めてしまいました。本来は隔離を義務づける指定感染症に指定する方法もあったのですが、その発動を遅らせたのが今回の問題となっています。拡大を止めるのは難しいかもしれませんが、拡大の速度を落としたり範囲を限定することは可能です。もう少し真剣に、国の対策が行われることを祈るばかりというのは本当に情けありません。
しかし新型コロナウィルスは、今後の観光業などに大きな影響を与える可能性が高まっています。全国のホテルやバスツアーではすでに、団体旅行のキャンセルが始まっているようです。今年の春節は1月24日〜31日(週末を含めると2月2日)のようですが、後半のキャンセルは既に発生してしまったようで各地で多大な損失を生みました。今後も沈静化に時間がかかるとすると、中国からの観光客は当面激減することは間違いないでしょう。タイも中国人に人気のスポットのようですが、今回の新型コロナウィルスにより3500億円程度の経済損失が生まれると予想されていますから、日本はそれ以上の影響を受け経済が大幅に減退する可能性があります。
そして心配なのが、オリンピックの行方です。このまま感染が治まっていけばいいのですが、逆に感染が広がっていく場合、世界への影響は必至となります。かつて中国でSARSが蔓延したときは、10ヶ月ほどの期間感染が広がりました。現状が2月ですので、SARSと同様と考えるとオリンピックの実施される7〜8月は感染が沈静化していない可能性があります。オリンピックは世界中から人が集まりますので、これをきっかけに世界へのさらなる爆発的な感染拡大もあり得ないことではありません。また世界各地のウィルスが一堂に会することでさらなる変異がおきることも考えられますから、下手をすると人類規模での大きな影響を発生する可能性もあります。私は15年ほど前にモルディブの小さな島に滞在したことがありますが、ここで風邪が流行ると3〜6ヶ月はいろいろな風邪をひき続ける、とスタッフが言っていました。まさに世界の風邪のウィルスが一堂に会すると、いろいろな形に変異していく状況を身をもって体験したこともあります。
もちろんオリンピックにおいては、そこに集まる世界的なアスリートも感染対象です。となるとすべてのスポーツにおいて、新型コロナウィルスに優秀な選手が感染する可能性がありますし、最悪命さえ失われる可能性が高まってしまいます。この危険を考えると、このまま感染が治まらなければ各国ともオリンピック出場の辞退なども続発しそうですから、開催はかなり危ういのかもしれません。
逆にオリンピックを中止すると、これまでオリンピック関連設備に投資してきた金額の大半は回収できないことになります。オリンピックはスポンサー収入と入場料収入の塊ですから、これがそのまま失われれば関連する投資を行った組織や企業が軒並み倒産という可能性もあります。もちろんホテルや交通機関、観光施設もオリンピックに合わせてさまざまな投資を行っていますから、それらもすべて無駄になります。オリンピックがあっても今年の後半は景気減退が懸念されていましたが、オリンピックすらなくなれば日本経済は大打撃を被り、大幅な景気減退と世界的なリセッションを引き起こす可能性もあります。
楽観的な予想をしてみますが、どれも根拠のないものばかりになってしまいます。急速な沈静化や症状が重篤化しない、死亡率の低下などすべてあり得ないことといっても過言ではないでしょうし、特効薬や画期的な治療法が短期で見つかる可能性もきわめて低いと思います。となれば、この悲観的予想は現実のものとならざるを得ないのかもしれません。
こうやって考えてみると、オリンピック経済は幻になることを前提に今後の経済を考える必要があるのかもしれません。確実に景気が減退する、それも世界規模でと考えた場合の策を講じるのが重要に思えてきます。今回の新型コロナウィルスが人類滅亡に繋がらなければ、リーマン同様数年で景気は復活します。そのときに備えて我々は何を考えるべきか、逆にそのときに必要となるものをどのように生み出すか、ITエンジニア全員が考えるタイミングになったのかもしれません。
しかし私も、この数ヶ月ぜんそくの再発で酸素飽和度を95%保つのが精一杯です。ちょっと辛くなると90%前後ですから、新型コロナウィルスをもらうとイチコロな気がしています...