Onomura System Consulting Office       

osco top


Weekly report

next

back

 

 

 

 

osco top

 September Second week

 週末所用があり、半年ぶりに電車に乗りました。高校入学と同時に電車通学を始めてからずっと電車に乗り続けた生活をしていましたから、半年以上も電車に乗らなかったのは初めての経験です。改札でSuicaを利用しようとしたら使えず焦りましたが、久しぶりの電車はちょっと不思議な体験となりました。(SuicaiPhoneのタッチが不調で機種交換になったときに、店の人間に言われて登録したのを忘れてました

 日曜日の早朝だったため乗客は少なかったですが、普段マスクをしない外国人が違和感を感じるのは当然と思えるほど、ほぼ全員がマスクをしている風景はやはり異様に感じました。早朝のせいか電車の窓を開けた換気も行われており、35年ほど前の電車が完全冷房化される前の雰囲気を思い出しました。若い方には理解できないでしょうが、私が社会に出て数年は、電車の一部しか冷房化は進んでいませんでした。小田急線の時刻表には「レ」の表示がある電車が冷房車であり、夏場はその時刻を狙って電車に乗ることが当たり前でした。地下鉄が完全冷房化されたのはもっと後であり、代々木上原駅で千代田線に入る前には、「これから地下鉄区間に入るため、窓開けにご協力ください。」というアナウンスが流れたものです。

 冷房のない電車は、夏場は窓を開けて走ることが普通でした。換気も出来ますが社内に流れ込む風が強く、社内のものが巻き上げられたり髪の毛がバサバサに乱れることも普通だったように思います。さらに私が子供の頃は、社内でたばこを吸う人間も普通にいましたし、吸い殻が木製のワックスがけの床にそのまま棄てられている風景もよく見かけました。田舎に行けば、客車の車両の端には幌のないデッキがありましたし、ボヤッと外を眺めながら風に吹かれて目的地に向かうことも出来ました。

 駅では硬券の切符にはさみを入れる駅員が、テンポよくハサミを鳴らしている風景もよく見られましたし、堂々と定期の入っていない定期入れを見せて改札を通っても「あ〜あ」という顔で改札を見逃されたこともありました。日中の検札もよく見かける風景であり、不正乗車や切符が見つからずあたふたする乗客の姿も見かけました。電車の中の娯楽は読書であり、漫画や新聞を開く乗客が多かったように思いますし、文庫本も手軽でよく読まれていたように思います。

 そして時代は流れ、切符や定期は電子化され駅員や乗務員の姿を見かけることは減りました。ホームで電車の発車を監視する駅員の仕事も監視カメラと安全柵に変わられましたし、改札に駅員が立つこともなくなりました。切符や回数券を買う機会は減り、マシンのように動くおばちゃんの働く駅のキオスクもなくなりました。不安な顔で時刻表や電車の行き先を眺める客も減りましたし、電車の娯楽はスマホが中心になりました。空調の効いた快適な社内で、汗をかくこともなく時刻通りに駅に着くのが当たり前になりましたし、社内に風が吹くこともなくなりました。駅のゴミ箱や網棚をあさって路上で安価に販売する商売もなくなりましたし、満員電車の窓が割れることもなくなりました。線路の継ぎ目で電気の消える銀座線も丸ノ内線もなくなりましたし、空調の効いた車内でWifiさえ使える時代になったのです。

 私が次に電車に乗らなくなる時には、仕事を引退したときかもしれません。コロナのおかげでこうやって電車に乗らない引退後生活を疑似体験できていますが、その引退が目の前まで来ていることを、風の流れる電車の中で昔を思い出しながら感じざるを得ない自分がいます。

 Times can't wait.

 棺桶に向けてまっしぐらの私は、過去を振り返ることしかできない年齢になってきたのかもしれません。それでも今も通用する過去を現在に残すのは、私のような老頭児の最後の仕事のように感じるのは、歳のせいだけなのでしょうか。