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 March Third week

 このところみずほ銀行の情報システムが、おかしな状況です。

 ことのおこりは先月28日のATMで発生した大規模障害でした。日曜日とはいえ全国のATMのうち8割にあたる4318台が正常に機能せず、ATMにカードや通帳を取り込まれてしまう障害も5000件以上発生しました。原因は1年以上利用のない定期預金を移行する作業と、月末の定期預金処理がかさなってしまったことであり、マシンの処理能力を超えてしまったようです。その後3日と7日にもATMが利用できない障害が発生しました。そして12日には外貨建送金処理に障害が発生し、300件の送金に遅れが生じたようです。

 ご存じの通りみずほ銀行は、旧第一勧業銀行、旧富士銀行、旧日本興業銀行の三社が合併してできたメガバンクです。三社はそれぞれ富士通、IBM、日立製作所のシステムを保有していましたが、合併時に統合することなく併合し、合併直後に大きな障害を起こしてきました。その後システムを4000億円以上かけてリニューアルしたものの、ベンダー3社以外にNTTデータも加わるマルチベンダーでシステムを構築してしまったようです。今回の部分は富士通の担当のようですが、それでもマルチベンダーの複雑なシステムが原因と考えることは当然と思います。

 複数のベンダーでシステムを構築する場合、その主導権をどうにぎるか、全体をどう統率するかが問題になります。三社がまったく別のアプリケーションシステムを構築したとしても、その連携部分は必ず発生しますし、仕様の変更等でインターフェース仕様が変わる場合も、どこが主導権を握るかで作業量が大きく変わっていきます。それぞれのベンダーが仲良く作業をしても意思疎通の問題は発生しますし、それぞれが自社の主張を通そうとすればかならずもめ事が起きます。結局どうコントロールしてもシングルベンダーのシステムよりは問題が起きがちですし、結果として利用者に大きな影響を与えてします。

 このような問題が起き、さらにはそれが再発するのは、おそらく主導権を握るべきみずほ銀行のシステム部門が内部で分裂しているためなのでしょう。それぞれの銀行出身者がその勢力争いを行えば、必ず問題が起きます。プライドの高い銀行員であれば確実にメンツや権力にこだわって自己主張が強いでしょうし、お互い本当の意味で折り合うことは難しいでしょう。

 しかしクラウドファウンディングを始めとした新しい資金調達方法が世に生まれ、各国通貨以外のサイバーマネーが普及した現在、銀行の存在価値は日々薄れています。さらに店舗を持たないネットバンクや流通業などが始めた新興銀行も有り、既存の銀行はそのネームバリューだけでビジネスを行うことは不可能になっています。全国に広がる店舗はコストの塊であり、支店の閉鎖とATMの縮小、他銀行との乗り合いやリストラを行うなど猛烈なコスト削減をしなければ生き残るのですら難しい状況です。その中で未だにバブル時代の感覚で各銀行出身者が勢力争いをしているのであれば、みずほ銀行に未来はないでしょう。

 さらにはベンダーも主導権争いをするのではなく、IT企業のほこりをかけて完璧な構築と運用を行うアイディアを出すべきでしょう。他社が対応する部分だから自社には関係ない、といった姿勢では、他社の協力を取り付けることはできません。大切なことは自社の取り分を増やすことではなく、他社を含めて全システムを最高の品質で維持運用することです。そのための主導権を握りそれを実現できたなら、確実に自社の仕事は増えるでしょう。他社の失敗を待つのではなく、他社システムを含めても最高の運用環境を提供できるよう本気で努力すべきと考えますし、それができるのは大手ベンダーだけです。

 今回のみずほ銀行のシステム障害は、日本の大手企業が抱える大きな問題を我々に示したように思えます。これまでの地位やネームバリューをかなぐり捨て、本当に顧客に利するサービスを安価で提供する。さらに市場や顧客要求の変化を適切に捉え、迅速に対応出来る。これができない大企業は、新型コロナウイルスにより激変する市場において確実に負け組になることを、我々は肝に銘じなければなりません。