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 May Second week

 緊急事態宣言の延長が決定しました。福岡や愛知を加え、今月31日まで延長されることになりました。しかしここにきてもまだ政府はオリンピック開催を前提とした動きをとっていますが、肝心のIOC会長は緊急事態宣言を受けて来日を取りやめるそうです。選手やスタッフ、そして多くの日本人が感染することは他人ごとなのでしょうが、さすがに自分の身の危険には敏感のようです。

 さて先日某ビジネス雑誌のオンラインで、在阪大学の教授の投稿が掲載されていました。おそらくは単に目立とうとしたのでしょうが、その教授は「東京五輪を開催すべき論理的理由」というタイトルで記事を書かれていました。しかしその内容はタイトルと裏腹の事実誤認と論理破綻の末の珍論で、さすがの私もあきれてしまいました。

 その教授の主張は次の通りですが、あまりにひどい論理展開でさすがに頭が痛くなりました。主張の要約と私の反証を記します。

  1. 日本は感染者数も死亡者も他国に比べて少ないので、オリンピック開催に最適。米国の都市、パリ、ロンドンなどでの開催は絶対に考えられないではないか。

    → 感染者数が少ないから東京が選ばれたわけではない。単なる結果論。
     

  2. 他国に比べ日本で新型コロナウイルス感染者が少ないのは、日常生活のマスク着用、うがい、手洗いの励行、ソーシャルディスタンスを守るなど、日本国民の規律ある行動や日本の街の清潔さ、国民皆保険制度による日常的な医療の充実のおかげである。

    → 上記もあるが、一番大きいのは島国で他国からの流入を防ぐことが容易であったためである。現に台湾やニュージーランドなどの感染率は低いし、島国で会っても軍関係者の流入の制限をしなかったグアムは高い感染率になった。日本も直近まで外国人技能修習生というかたちで経済力のない国からたくさんの人間を入れたことが、感染拡大の原因となった可能性が高い。
     

  3. 海外でも日本でも、個別のスポーツイベントは開催されている。海外ではサッカーや野球、バスケットの試合も開催されているから、オリンピックの開催は問題ない。

    → 大手大会は観客が制限されているか無観客である。さらにそれぞれの開催は単独で開催場所も離れている。複数競技を一定圏内で実施し、すべての競技者や関係者の宿泊所をまとめている東京オリンピックとは比較にならない。
     

  4. 高校バレー、サッカー、ラグビー、野球、プロ野球、Jリーグは全国で試合を実施しているが、感染クラスターが発生したという情報は出ていない。開催の経験を積み重ねること開催側、選手側は感染防止策を、観客側も規律正しい「新しい観戦スタイル」を確立させつつある。東京五輪は、これらの経験を生かせば開催できる。

    → 仮にこれが正しいとしても、それは日本人に限ったことである。他国の選手や関係者にはその観戦スタイルはないので、経験を活かしようがない。(競技者や関係者は、自分の協議の前後に応援で観戦するケースが多い。) さらに日本のオリンピックの主催者や関係者、観客はそれら競技の関係者ではなく、ほとんどが初めての経験である。
     

  5. 五輪に出場する選手・大会関係者・報道関係者は最大9万人と推計している。東京都の人口は約1400万人なので9万人は人口の流入としては誤差の範囲内である。

    → インドやブラジル、アメリカなど、人口に比して非常に高い感染率の国の人間が訪れるし、対策が十分に行えていない途上国の来訪者も多い。彼らは潜在的な感染率が極めて高いと考えざるを得ないため、9万人であっても潜在的感染者確率の点から考えれば、数十倍の規模と考えられる。となれば、決して誤差の範囲ではない。
     

  6. 選手・関係者はいわゆる「エリート」であり、選手の日常の体調管理、トレーニング、食事、感染対策等は、万全に管理され入国前、入国後のコロナ検査体制を組み行動ルールを定めれば、大きな問題は起き得ない。

    → エリートに対して万全の管理がなされているというのは単なる思い込み。さらに9万人の大半を占める使節団や報道関係者はエリートではないし、万全の管理はなされていない可能性のほうが高い。
     

  7. アスリートが活躍するとコロナ禍に苦しみ、荒れがちになる我々の心を支える。

    → アスリートにクラスターが生まれれば、世界的な損失で日本の恥になる。それがどうして心の支えになるのか全く不明。
     

  8. 4年に一度の偉大な王者を決定する競技会でベストのパフォーマンスを披露することに、彼らの「人生」がある。

    → 逼迫する医療体制の中で、多くの医療関係者の人生は十二分に蹂躙されている。さらに新型コロナ感染者ではないのに、逼迫する医療体制の中で通常医療や手術も十分に受けられず苦しんでいる患者や家族の人生はどう考えているのか?
     

  9. 一部の競技を、東京以外で開催してもいいし、国内の他都市で開催したり、海外でも可能な都市があれば分散開催してもいい。コロナ禍でインバウンドで景気回復や一儲けの思惑は、雲散霧消した。そして今、「東京」にこだわっているのは、そういう五輪に「夢」を抱いた人たちだけだ。

    → 現実として今から他国での準備も不可能だろうし、全国で逼迫する医療体制の中のどこで開催するつもりなのか?そこでクラスターが発生した場合、医療をどうやって支えればいいのか全くもって不明である。
     

  10. ランナーは検査を受けて陰性であれば、「聖火リレー」を走ること自体で感染を広げることはあり得ないので、知事の聖火リレー中止は愚行だ。

    → ランナーの検査は主催者側では行っていないし、単に自主的に推奨されているだけである。さらにこの検査状況で、一般の人間が希望しても簡単にPCR検査はうけれれない。となると、多くのランナーは実際に検査は受けずに走っている。したがって、あり得ないと断言する根拠はない。
     

  11. 感染防止のためには、沿道に観衆を入れなければいいので「聖火リレー」そのものを中止する必要性はない。

    → ランナーが走るすべての導線において、一切の観客を防ぐ方法はないし、経済的にも不可能である。となると、中止以外の方法はあり得ない。

 といったことを、まともに論じている有名大学教授が存在することが驚きですし、それを掲載する有名雑誌サイトの知性も疑わざるを得ません。ここまでして、なりふり構わずオリンピックの開催をゴリ押ししようとする人たちがいること、私には恐怖を感じさせます。

 オリンピック憲章によると、「オリンピズムの目標は、あらゆる場でスポーツを人間の調和のとれた発育に役立てること」とあります。であれば、新型コロナウイルスで全世界で発育の調和が狂っている現在、調和のとれた発育を実現できる日までオンリンピック開催を延期することが当然と私には思えます。

 国民のみならず世界のメディアも同様の主張を始めている今、日本政府は狂気に駆られた開催をごり押しするとすれば理由を知りたい気がしますし、狂気にしはいされているのなら憲法改正は危険以外の何物でもないように私には思えます。