早くも8月も四週目に突入です。さて今回は夏休みシリーズで、先週に引き続き電気自動車の話題です。
ガソリン車が終焉を迎え、世界は電気自動車へ大きく舵を切ったことは、前回申しあげたとおりです。しかしすべての車両の電気自動車化には、今後解決しなければならない問題が山積しています。
まずは充電ステーションです。電気自動車は現在のところ急速充電でも、最低15分程度かかります。ガソリン車のように1分だけ止めて10リットル燃料を補給する、といったことができず、電気が切れると15分程度のチャージ時間がかかります。ガソリンスタンドでも前の車の給油と清算で渋滞することはありますから、電気自動車の場合は深刻な問題となります。すなわち充電スタンドに行っても、前の車が充電を開始したばかりだと、最低15分は待たなければならないことになります。さらに自分の番に回ってもそこから充電時間が15分かかわるわけですから、緊急時や急ぎの用事がある場合は非常に問題となります。
これを解決するためには、商業施設などの町中の駐車場を充電可能にする、交差点などで停止した際に充電できるワイヤレス充電の仕組みを作る、すべての電気自動車に統一した規格でリユース可能なバッテリーパックを搭載できるようにし、緊急時はそのバッテリーパックを充電スタンドで交換する、などの方法が考えられますが、どれもコストが非常にかかります。そういった設備を誰の負担で作り、どのように課金していくか、これから考えなければならないテーマが山積しています。
さらに田舎や山間部など、人があまりいないところでの充電問題です。山間を走ると平地よりも多くのバッテリーを消費することは間違いありませんし、そういった場所に果たして一定距離の充電スタンドを作れるかは今後考えていかなければなりません。国道沿いは一定距離ごとということになるのでしょうが、県道や市道といった自治体が管理する道路で、果たして利用者がいるかわからない設備に十分なお金がかけられるかは疑問が残ります。
次に災害時です。地震などの広域災害が起きた場合、停電することは普通といえます。となると、被災した範囲全部の充電スタンドが機能しなくなりますし、家庭での充電も難しくなります。復旧支援する重機や消防、救急車両がバッテリー切れになった場合、どのように給電するかを考えていかなければなりません。一定数の期電車を置くとしても、そのコストは莫大になると思われますし、通常あまり使わない車両でしょうからその維持運用をだれがどのような予算で行うかは多くの課題が残ります。
さらにはこれまで発売された自動車の維持運用問題です。2030年からガソリン車の走行禁止、とできればよいですが、旧車ファンやクラッシックカー愛好家はそれを電気使用に改造することを望まないでしょう。さらに私のように車を20年近く乗る人間には、強制的な走行禁止は財産権を侵害することになります。となるとガソリンスタンドを一気に廃止することも難しいでしょうし、トラクターや各種エンジンのように燃料を必要とする機器も数多く残るでしょうからそれらをどうするかも考えていかなければなりません。
また違った観点では、事故の問題も気になります。ガソリン車と違い関電の問題が発生するでしょうし、バッテリーによるやけども考えられます。先日の大雨では、事後的にショートした電気自動車が発火した事件がありましたから、やはりガソリン車とは違う問題が発生しそうです。
このように考えていくと、電気自動車が社会に根付くためには、様々な事項を解決し実際に設備や人員を投下しなければなりません。ガソリンが100年かけて整備した道のりを、電気自動車は数年で実現できるかは、現時点では極めて疑問としか言いようがありません。