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Weekly report

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 May Second week

 5月のゴールデンウィーク が終わりました。まだまだ各地の感染拡大の結果は明らかになっていませんが、交通機関や観光地は昨年、一昨年に比べ遙かに混雑したようですし、少しでも経済が回ったことは喜ばしいことと思います。とはいえ今後の状況は気になりますし、経済が継続的に好転することも難しい状況でしょう。

 さて多少古くなりましたが、富士通のリストラが進んでいるようです。昨年4月富士通は、子会社であったグループ企業15社を富士通、ならびに富士通Japan社に統合しました。富士通本体と子会社による営業の重複を解消し、顧客に対してサービスレベルを上げる、というのが統合の目的です。しかし誰もが考えて分かるとおり、別々の機能を統合するということは重複した人材が不要になることを意味しますし、業績が悪化する富士通グループを考えるとやはりリストラが目的であることに気づきます。

 その後の発表により、予想通り富士通はりリストラを発表しました。2022年3月までに50歳以上の社員に対し希望退職を募り、結果として3000余名の人材がリストラされたようです。富士通は2019年末に3000名弱のリストラを図っていますので、そのリストラによって社会の高所得人材を放出し、今回は関連会社に在籍していた高所得人材3000名強をリストラすることになったようです。これによって人件費といった固定費を低減するとともに年功序列型の賃金体系を成果型に変更することでより多くの人件費を圧縮することを試みているようです。

 富士通といった大企業がここまでの取り組みを行わなくてはならないほど、日本企業、特にIT業界を取り巻く環境が厳しくなっていることを我々は考えなければなりません。経産省の発表したDXレポートにもあったとおり、2025年の崖といわれるレガシーしステムの処分が進む現在、いったんシステムを導入すれば安定的に利益が出るIT業界のビジネスモデルは確実に破綻しつつあります。開発コストは赤字になっても、その後続く運用保守で利益を確保するというのがIT業界のビジネスモデルでしたし、それによって多くの人材を養うことができたことは事実です。しかしそのビジネスモデルが終焉を迎える以上、IT業界は新しいビジネスモデルを模索せざるを得ないと言うことなのです。

 それは単純に汎用機ベースのシステムを捨ててオープン化する、という意味ではなく、言われたことだけをきちんと行って成果物を納めても、その対価はどんどん下がることを意味します。世界中のIT企業が言われたことを言われたとおりに実行できるようになっていますし、それであれば日本の半額以下でシステム構築を実現することが可能になっています。となるとこれからのIT業界は、自ら価値あるアイディアを提供するように変革せざるを得ないのです。富士通がそれを実現しうるかは正直疑問ですが、それでもそこに向けて人材シフトと組織変革を行おうとする意欲を持っているのはまだまだ可能性を感じさせます。むしろ恐ろしいのは、富士通やIBMといった、いわゆるプライムベンダーと言われる企業から仕事を受けていた下請企業、孫請企業でしょう。

 これらの企業は、まさにプライムベンダーの要求どおりに仕事をこなすことがビジネスモデルになっています。コストを要する仕様変更にも無償で対応し、無理な納期圧縮にも応える。こうやって顧客とプライムベンダー間で発生する様々な矛盾を吸収してきたのがこれらの下請、孫請企業であり、それによって利益を上げてきました。しかしプライムベンダーが変革する中でその存在価値は日々低下していますし、コスト圧縮だけでは業界自体が維持できない状況が目の前まで来ていることに気づかなければなりません。採算の出ない仕事でもそれらの企業は安いコストで請け負ってきましたが、自らプライムベンダーとして活動するノウハウも営業力持っていません。日本ではコスト安といっても、世界の同様の企業に比べると圧倒的にコストはかかりますから、すでに競争力はないに等しいと思います。

 今後AFTERコロナの時代に入ることは間違いありませんが、その中でそういった下請企業、孫請企業の生き残る道は極めて限定されます。だからこそ彼らがプライムベンダー以上の構造改革をしないと、IT業界全体が崩壊・縮小することが不可避の状況になってしまうことは目に見えています。

 これは他業種も含めた日本企業全体のビジネスモデルに関わる問題であり、その問題を解決しない限り日本に明日がないことを我々は気づかなければなりません。