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Weekly report

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 July Second week

  7月8日の昼前、奈良県で選挙の応援演説を行っていた自民党の安倍元首相が模造銃によって暗殺されました。犯人は元海上自衛隊員の男ですが、特定の宗教に家族がのめり込み破産したことから、この宗教団体と関係が疑われる元首相を付け狙っての犯行のようです。

 この時代ですから、スマホなどのさまざまな映像が撮られており、その犯行状況はかなり明らかになっています。バスロータリーの中州のような場所で演説をしていた元首相の背後から犯人は近寄り、5m程の場所から模造銃を発射したようです。一発目は命中していないようでしたが、そのまましゃがまず振り返ったことで二発目が命中し、ほぼ即死に至ったようです。警備の問題は大きいように思いますし、当事者の危機意識もやや希薄だったため今回の状況になりましたが、いろいろと考えるべき点が多い事件となりました。

 マスメディアは政治に対する攻撃や、民主主義に対する挑戦という論調を連ねていますが、現状のところそういった意味合いの薄い私怨による犯行のように思います。たまたま参議院選挙期間中であり、議員候補の応援演説中という点に焦点が集まっていますが、事実は見当違いの個人的な恨みのように思われます。逆にこの事件を振りかざして選挙戦を乗り越えようとするさまざまな政党の思惑の方が遙かに怖いように思いますし、 元首相の同情票が集まることを私自身は危惧しています。

 今回の件で一番問題なのは、警備体制と当事者の危機意識です。VIPと呼ばれる人物であるからこそ警察が警護をするのでしょうが、後ろを自動車が走ったり人が立てたりというのはやはり問題と思います。車が通れるのであれば、攻撃をする気であれば自動車の後部座席から狙うことができますし、大型のトラック等を使って直接はねることも可能でしょう。となるとなぜ後ろが空いた場所で演説を行ったのか、そういった攻撃をどう防ごうかと考えていたのかをあきらかにしなければなりません。

 また一発目の発車後、警備担当者が身を挺して元首相を守った気配もないのも気になります。自分の挺して守れとは思いませんが、覆い被さって姿勢を低くさせるのは通常の警護のやり方になります。また警備担当者が手に持っている防弾カバンも、サイズ的には二つ折りか三つ折りにたたまれているタイプと思いますが開いていません。慌てていたから、というのはあまりに訓練ができていないように感じてしまいます。

 当事者としても、銃声等の大きな音がした場合はすぐに伏せるべきです。英語では「Duck!」と叫ばれますが、姿勢を低くすると表面積が小さくなるため銃弾等は当たりにくくなります。この訓練を要人に行っていないというのも問題を感じます。さらに周りの観客もしばらく様子を見たり近寄っている方が多く見受けられましたが、こういったケースでは少しでもはやく現場を離れるべきです。攻撃は1人とは限りませんから、どの方向からも流れ弾が飛んでくる可能性がありますし、一つの攻撃を陽動として本格的攻撃を行うのもテロの常套手段だからです。私もオームの時に催涙ガスをまいた事件に巻き込まれたことがありますが、集まってくる人々を離れすぐにタクシーでその場を脱出しました。

 三つ目の問題は、模造銃でしょう。外見を見る限りパイプ爆弾と同じような作りで、一方向を閉鎖しない原始的な先込め銃の形状のように思えます。発火方式が電気式なのか、はたまたオモチャの火薬を使ったものかは分かりませんが、煙から考えると黒色火薬を鉄パイプに詰め、ベアリング等の飛翔物を詰めた散弾銃タイプの模造銃に見えました。すごいと思ったのは木製フレームとテープで結合していることであり、あれだけの反動をテープ一つで抑えているのは現代のテープの性能の高さを改めて思い知ることになりました。インターネットの恐ろしい点は、すべての材料をネットで購入でき模造銃の作成方法も提示されている点です。こういった模造銃を作ることは誰でもできますし、今後模倣犯が出ないことを祈るばかりです。

 今回の件で、銃社会の危険性とかインターネットの危険性、民主主義に対する挑戦といった方向違いの考察をすべきではないと私は思います。しかしこういったモチベーションを高める人間が少しずつ増えているのは事実であり、様々な方法で我々の安全を脅かす犯罪の可能性が高まっていることを我々は認識せざるを得ません。万が一に備えて危機意識を持ち、巻き込まれた際にどのような行動をとるべきかは、1人1人が考えなければならない時代になってしまったことは事実のようです。