先週は山形、岩手、福井で大雨が降り、多くの地域で河川の氾濫や地崩れが発生し大きな被害を発生させました。被災された方にお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復興を願っております。それぞれの地域で線状降水帯が発生し24時間降水量は400mmを超えたようで、地面の保水力が下がり地滑りが起きました。また急速に流れ込む雨水によって河川が増水し、氾濫等を起こしてしまったようです。
2000年に入ってから、各地で猛烈な雨が再び降るようになりました。台風の数も増えましたし、威力も増しているように思います。台風もそうですが、線状降水帯も予測できない箇所で次々発生し、大きな被害を毎年のように出しています。今後東京を中心とした首都圏でも同様の事態が起きる可能性もありますし、真剣に対応を考えざるを得ません。
この10年、東京付近の河川氾濫の予測が発表されています。72時間の降水量が650mm〜700mmを超えると、荒川や神田川の氾濫が発生し首都圏が水没する可能性が出ています。しかし恐ろしいのはこの総定数地であり、今回のように24時間で400mmを超える状況が二日にわたって発生すれば、確実に氾濫することを意味しています。
現在まで多くの水害は、どちらかというと山間部や田園地帯で起きていました。昨年の熱海のようなケースは山間部であったものの、熱海のよう名密集した住宅地を巻き込む事態が起きました。しかし東京のようなビルや地下鉄、地下道が発達した場所での水害は、現在日本では発生していません。だからこそ発生した場合、実際に何が起きるかは誰もに分かりません。
荒川が氾濫した場合、大手町以東が水没する可能性があります。水は住宅地のみならず市街地にも流れ込み、地下鉄や地下道を水没させます。水は低い方向に流れますから、いったん水が流れ込むと深々度の地下鉄向かって流入します。半蔵門線住吉駅は荒川から1kmも離れていませんし、東京の地下鉄で一番深い深度の海抜−33mです。となれば、浸水の被害は免れない可能性が高いといえます。もちろんそういった事態を想定し、防水壁や浸水遮断の設備や施設は作られていますが、想定を超える雨量に耐えうるかは誰にも分かりません。ましてや氾濫が急に起きた場合には、それらの装置を瞬時に稼働できないかもしれません。
さらに怖いことに、地下鉄が浸水時に走っていたとなると、車両走行ができなくなるだけでなく水没の危険もあります。乗客の避難を考えると、上からの浸水を防ぎながら横からの流入に対して高所に向かわなければならないといった矛盾も起きる可能性も高いでしょう。こういった事態に対する訓練等も十分に行われているとは思いませんし、緊急経路もどの程度機能するかも疑問です。
さらに怖いことに、東京の上下水道インフラは基本的に昭和の時代に作られているということです。下水は規格は古く下水管も老朽化しています。通常時は少しの流量であっても、大量の雨水が流れ込めばマンホール等からあふれますし、下水管が破裂すれば結局地下鉄などの空洞に流れ込んでしまい、地下鉄の浸水対策も無効になってしまいます。
これは地下道も同様であり、ビルの地下も同様です。ましてや大手町界隈の地下道や地下鉄、JRの地下路線は奇々怪々ともいえるほど複雑に伸びていますし、その出入り口も無限にあります。そのすべてから乗客や移動者を外部や建物の階上に移動させ、浸水の前にその浸水口を塞ぐことは不可能に近いと思います。さらに大手町は地上のケーブルを地下に埋めていますから、そういった箇所の漏水で電気が遮断すれば、避難も侵入口の遮断も不可能になると思います。これが深夜の人出の少ないときや休日であれば、少しは被害が軽いかもしれません。しかしウィークデイの日中に起きることを考えてみると、絶望的な状況が想定されます。渋谷の地形を考えても、駅周辺がすり鉢型にへこんでいます。ここに水がたまることは簡単に想定できますし、副都心線の渋谷駅は深度30mですから大手町同様水没するでしょう。こういった事態に備えた東口雨水貯留施設も4000m3ですから、24時間に400mm降ればあふれることは確実でしょう。
現在もまだオミクロン株による第7波で、医療機関は逼迫しています。これに洪水の被害が重なれば、医療機関は間違いなく麻痺しますし、東京そのものが機能停止する可能性も高いです。もちろん洪水が引いた後を考えても、地下にたまった排水にどれだけの時間がかかるか誰もに分かりませんし、全国の排水機材を集めても早期に元通りに復旧できることはないでしょう。となれば首都圏の機能は、数ヶ月失われる可能性があります。
東北と北陸の状況を真剣に捉え、我々は準備を始めなければなりません。在宅勤務だからといって安心することなく、現実の問題として首都圏の水没を考えなければなりません。