三菱重工のリージョナルジェット開発プロジェクト、Mitsubishi
SpaceJetプロジェクトが中止されました。YS−11に続く国産旅客機の開発として期待されたましたが、数々の延期を経てとうとう中止になってしまいました。
先週2月7日、2020年から新型コロナウイルスの影響で延期となっていたMSJプロジェクトの正式な中止が発表されました。それまでにも購入契約の解消や試験飛行拠点の閉鎖が行われていたので中止の可能性はありましたが、今回三菱重工は中止を正式に決定したようです。開発には1兆円以上の投資が行われたようですが、それを回収することなく中止したことは残念でなりません。
中止理由は新型コロナウイルスに起因する航空機需要減退もあるようですが、CEOはMSJを量産する上で必要となる型式証明の取得の遅れもあげています。取得プロセスの理解不足が開発の遅れを招くことになり、このまま続けても取得のめどが立たないというのも理由のようです。
とはいえ根本的な原因は、日本のモノ作りの伝統を変えられなかったことのように私には思えます。さまざまな改善を重ねて精度の高い部品を作り、それをくみ上げて製品にする。不具合は根気よく原因を追及し、問題を正確に把握してから改造を加える。徹底した品質管理を行い、品質の劣化による不具合を極限まで減らす。これが日本のモノ作りの強みです。
昔は世界中がこのやり方でモノ作りをしてきましたが、その精度の高さ、問題発見解決による確実な不具合の撲滅、徹底した品質管理が行える日本製品に強みがありました。また日本人生来の真面目さから根気よく仕事に取り組むため、不可能と言われる製品を作り出したり量産化を可能にしたりとモノ作りでの強みを発揮してきたのです。
ところが2000年以降、世界はソフトウェアを利用したモノ作りに移行していきます。完全厳密な者を作らなくても、コンピュータシミュレーションで何万回でもテストが瞬時に行われるため、短時間の不具合の発見が可能になります。精度の高い部品を作らなくても、全体のコントロールをソフトウェアで行うため、不具合の対処が非常に早いだけでなくすべての製品が瞬時に直せます。曖昧なものでもとりあえず作り出し、試している中から正解といえる組み合わせが探せますので、想像もできないものでも生み出すことが可能になります。
これは今回のMSJだけでなく、日本のモノ作りの根本的問題となりつつあります。我々はモノ作りとITの融合を積極的に進め、ITを前提としたモノ作りに転換しない限り、日本が再び世界の覇権を握ることはできないと私は考えています。