★書名をクリックすると、amazon.co.jpにリンクされます。購入される方はどうぞ。
■ぼくの家はここにあった (9/15/2008)
田邊雅章 朝日新聞出版 \3,800
書評になじむのか迷うところですし、この本の趣旨からするとややシーズンはずれになりますが、ご紹介です。私の講座でときたまご紹介していましたが、この本は原爆前日の広島市を復活させようとした方の記録となります。
第二次大戦末期、広島市に人類初の原子爆弾が投下され、多くの方々がなくなったことを知らない方はいらっしゃらないと思います。しかしながら原爆によって、その後の歴史から二つの町が無くなってしまったことを知る方は少ないと思います。それは爆心地である「猿楽町」と「細工町」です。二つの町は原爆ドームがあった街であり、現在は平和記念公園に変わってしまっています。爆心地であるが故に被害は甚大であり、その街並みとともに住んでいた人の記憶と記録がほとんど消失してしまいました。
この本の作者は猿楽町に住んでおり、記憶の風化の影で街そのものが失われることを憂い、その街並みの復元を考えました。映像作家であったためCGをつかった街の再現を試み、そのために日本中から記憶を集めてひとつひとつ復元をはかりました。この本はその試みの記録であり、その結果となる映像も付録のDVDに記録されています。
書籍を読んだ後DVDを見ましたが、その映像のすばらしさと昭和家屋のたたずまい、そこに生活する普通の人々の息づかいが感じられる素晴らしいものでした。同時にそれが一瞬にして失われる瞬間までが記録されており、原爆の残酷さと戦争の無意味さ・むなしさを痛烈に感じさせてくれます。作者の命がけの執念と想いがここまで伝わってくる新しいメディア(本+DVD)のすごさを、本当に感じさせてくれました。
世界中の紛争の影にある真実を、少しだけでも感じてみたい方に。
■グーグルvsアップル ケータイ世界大戦 (9/15/2008)
石川温 技術評論社 \1,480
最近本当にこの手の本をよく読むのですが、面白かったのでご紹介です。
タイトルでお分かりの通り、グーグルとアップルというこれからのネットの世界を牽引するであろう企業を対象に様々な考察をした本ですが、この本の特徴は携帯電話の世界を中心とした記述となっている点です。アップルはiPhoneという製品によって、ネットとコンテンツをつなぐ新しい世界を見せてくれました。それは同時にネットを足場とする新しいビジネスモデルを示したことになりますし、その新しい可能性に多くの企業の目が向いています。またそれらの新しい可能性は、我々ユーザにとっても未知の世界を切り開いてくれると思われます。
この本では、それらの背景となる携帯電話のOSやその開発が意味するもの、それらの結果として携帯電話やそれらを使ったサービスはどちらに向かっていくのか、その競争の過程でどのような淘汰の可能性があるかといった次の世界を予測するヒントを提供してくれます。特にAndroidがしめすオープンソースということの意味合いについて、プロジェクトマネジメントのヒントを含め本当に考えさせられました。
ということで、携帯電話の新しい可能性と情報技術の新しい方向性を知りたい方に。