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■アップルを作った怪物 (12/7/2008)
スティーブ・ウォズニアック ダイヤモンド社 \2,000
伝記、それも自伝がこんなに面白かったのは初めてですので、文句なく万人にお勧めです。
著者は「二人のスティーブ」の中でも、常に謎に包まれているウォズニアックのほうです。もう一人のスティーブとは、スティーブ・ジョブス。すなわちこの本は、ジョブスとともにアップルの共同創始者であるスティーブ・ウォズニアックの伝記なのです。
アップルに詳しい方はご存じと思いますが、このウォズニアックはジョブスと衝突のすえ、アップルを退社したことになっていますし、その後教育の世界に身を投じ、現在またアップルに一部復帰したように伝えられていました。しかしその多くの伝聞が間違いであることを、この本で知ることが出来ました。この本が書かれたのは、そういった間違いを正す目的で、本人が記述したそうです。とはいえ口述筆記の形を取っているため非常に読みやすい本ですし、得に自慢や精神論は何も出てきませんので、抵抗なく最後まで読めます。
しかしこのウォズニアック、噂以上のコンピューター・ギーク(Computer
Geek)でした。伝聞と違い、ブルーボックスや初期のアップルコンピュータは、すべてこの方がつくったそうです。単純な興味を深く深く追求し、考え、その上で自分の発想を一歩一歩現実として実現していく。欲しいという気持ちを、科学的に実現する。現代の日本のIT技術者は、この著者の技術に対する考え方や取り組み方法を絶対に学ぶべきと私は思いました。技術的には真面目の上に真面目であり、同時にジョークやいたずらが大好き、人を悪く言うことをせず、ただ単純に自分のやりたいことを正直かつ素直に行っていく。こういうこの方の技術者としての生き方や考え方は、いまの時代に我々が真剣に学ばなければならないものばかりです。
「世界は発明家を必要としている・・・・・・すごい発明家を。君だって、その一人になれるんだ。自分のしていることが大好きで、そのために必要なことを何でもしようって気があれば、君にも出来る。自分はどういうものを設計したいのか、作り上げたいのか、夜、自分一人でじっと考え、考え、考え続ける。それだけのことをする価値はある。絶対にある。」
Steve Wozniak
ということで、ITに係わるすべての方々、必読!
■グランズウェル (12/7/2008)
スティーブ・ウォズニアック ダイヤモンド社 \2,000
ちょっと分厚くてご紹介するにはどうかと悩んだんですが、私自身が最近考えていることの一つのヒントとなりましたのでご紹介です。
グランズウェルとは、「人々がテクノロジーを使って、自分が必要としているものを企業などの伝統的組織ではなく、お互いから調達するようになること」だそうであり、その実態として情報の急速な普及とコントロールが難しい自律的状況を意味します。今風の悪い言葉で言えば「ネットの炎上」であり、これもグランズウェルの一つの姿を示しています。企業がどのように情報をコントロールしようとも、人々は自律的にその情報を伝承し、結局は企業の思惑通りに情報はコントロールできないことを意味しています。しかしその状況を悲観せず、目的に沿って活用する方法を具体的に示してくれているのがこの本です。
現在の「情報の洪水」やネットにおける口伝え伝承の問題などを考える際の、キーとなる考え方であり、この考え方をもとに現在の情報化社会を考えることは、これからの情報化社会のあり方を検討するベースとして面白いと思いました。
しかしこの本、さまざまな実例をもとにグランズウェルを紹介し科学的に検証てくれる点は素晴らしいのですが、なにせ文字が小さくて分厚い。真面目に取り組むと、読破に数週間は確実にかかります。私も得意の早さで読んでみたものの、それでも1時間ぐらいかかっちゃいました。この忙しいときにこの時間は痛かった...
ということで、現在起きている情報化の波を説明するヒントの一つが欲しい方に。