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世界が絶賛する「メイド・バイ・ジャパン」   (6/5/2011)  

 川口盛之助  ソフトバンク新書  \730

 相変わらずユニークな視点で、日本のモノ作りのあり方を説いてくれる良書なので、必読の一冊としてお勧めです。

 基本的な内容は前著である「オタクで女の子な国のモノづくり」と同じなのですが、いくつか新しい視点も入っており、日本のモノ作りについてかなり面白い分析がなされています。前著でも述べられていたように、日本は世界に比べて特殊な文化を持っているようですし、その文化を背景に創られたものは、世界に訴求できる多くの特性を持っているようです。効率性だけでなく感性を重視し、「儲かるもの」より「世の役に立つもの」を生み出したいとする日本の技術者の指向性が、日本のモノ作りの基本であることは非常に面白いと思いました。
 さらに今回の宗教のスタンスも、非常に面白い指摘でした。魔法を駆使するハリー・ポッターにローマ教皇庁が不快感を示したのに対し、日本は「らき☆すた」の鷺宮神社、「萌え寺」の了法寺など、サブカルチャーと宗教が折り合いをつけて共存する。まさに八百万の神の国を象徴する出来事ですし、その柔軟さが日本の強みなのかもしれません。

 こういった様々な角度で日本のモノ作りを分析できる素晴らしい方のですが、巻末の謝辞で奥さんを「ちゃん」づけで載せられるのは、この人ならではの感性なのでしょうね。

 ということで、日本文化を背景にしたモノ作りを行うすべてのエンジニアに、必読!

 

日本復興計画        大前研一    文藝春秋社    \1,143 (5/23/2011) 
大震災後の日本経済   野口悠紀雄  ダイヤモンド社  \1,500 (5/23/2011) 
 

  東日本大震災とその後の経済や社会のあり方について、コンサルティング業界の雄とトップの経済学者が同時期に出版されました。二冊とも読む価値はありましたので、とりあえずお勧めです。

 二冊とも論じていることは、東日本大震災において日本の社会や経済にどのような影響が生まれているか、その影響を前提に今後我々がどのような考えで社会を復興していくかということになります。同じテーマを違ったスタンスで論じているのですが、これが結構いろいろな意味で本当に面白いと思います。

 大前氏の本は、Web上で有名になった直後に公開されたライブがもとになっています。私もその映像は直後に見ましたが、さすが元原発技術者だけあって技術的にも論理的にも非常に説得力のある内容でしたし、今後の経済や社会がどのようになっていくかのヒントが提示されていました。この本はその内容を加筆し、今後我々がどのような社会を目指すか、どのように実現すべきかを簡潔に示してくれます。

 それに対して野口氏の本は、経済的な分析が素晴らしく、大前氏とは違った社会のあり方や、偏った見方が実は復興に対して真反対に働いてしまうことを警告してくれます。「需要不足から供給制約」への転換という考え方は非常に面白いですし、復興のための負担をどのように考えることが公平かつ合理的かを経済理論を駆使して説明してくれます。

 両氏ともに卓越なる分析力を駆使した内容であるにもかかわらず、その論法がまるで違うことが非常に面白かったですし、復興負担の考え方も違っていることが私にとっては非常に有益でした。物事にはいろいろなアプローチがあり、やはり唯一絶対の正解があるのではないことを確認することができましたので。ただし、野口氏の本を理解するためには、相当な経済学の知識が必要となりますが。

 ということで、この先我々はどう考え、何をすべきかのヒントを考えてみたい方に。